​第3回定期演奏会

【アンコール一曲目について】
カラ・カラーエフが作曲した『ピアノのための24のプレリュード』という作品から第7曲目です。
今回の演奏会のアンコールには、是非カラ・カラーエフの作品を取り上げたいと思い、バクー音楽院にお願いして、所有しているカラ・カラーエフの楽譜をほとんど全て提供して頂き、その様々な楽譜の中から選びました。
本来はピアノのための曲ですが、長さや音域や調性、曲そのものの魅力などが“アゼルバイジャン共和国大使館とバクー音楽院の方への感謝と両国の友好と明るい未来のために”というメッセージを伝えるためにオーケストラで演奏するのに相応しいと考え、今回参加したオーケストラの全楽器で演奏しました。

 

【演奏会について】

今回は、メインにアゼルバイジャンの作曲家カラ・カラーエフのバレエ音楽を取り上げます。昨年生誕100周年を迎えたアゼルバイジャンの作曲家カラ・カラーエフの作品は日本ではまだあまり演奏される機会がありません。

 

今回の演奏会では、アゼルバイジャン共和国大使館から全面的にご支援を賜り、演奏会形式・抜粋ではありますが、カラーエフの代表作バレエ「7人の美女」の日本初演が実現する運びとなりました。演奏会当日は、大使が来賓としてスピーチをされ、またアゼルバイジャン国営放送が入って彼の国のテレビや新聞に我々の演奏が報道される予定になっております。

 

また、演奏会当日は、日本の皆様にアゼルバイジャンをより身近に感じていただくために会場ホワイエにて伝統工芸品である“絨毯”や“人形”、地図などを大使館よりお持ちいただくことになっています。

 

アゼルバイジャンは、今年外交100周年の節目を迎え、その記念事業の一環として我々の演奏会に協力してくださっています。今回の演奏会で使用するガラーエフの全ての楽譜は、大使館を通して、首都バクーにあるバクー音楽アカデミー(音楽大学のような機関)から提供を受けており、膨大な量の楽譜を大変な労力と時間をかけて提供してくださいました。

我々の演奏会のために、一日でも早く届けようと、全力で取り組んでくださったことに、言葉では言い尽くせないほど、深く感謝しております。

 

 

【アゼルバイジャン共和国と我が国との関係・演奏会への思い】

アゼルバイジャンは”火の国”と呼ばれ、首都バクーの「バクー油田」をはじめ、石油や天然ガスなどの資源が豊富な国です。シルクロードの要に位置し、東西文化が融合する独特で豊かな文化をもつ国でもあります。

 

ここから、日本とアゼルバイジャンとの関係を少しご紹介したいと思います。この演奏会を企画する中で、アゼルバイジャンが大変な親日国であるとのことを、書籍などから知りました。その理由は、他者を助け、公平を重んじるなど、共通した国民性、高い技術をもつ日本製品への絶対的信頼日本文化への理解や好感、などが挙げられます。

 

アゼルバイジャンには「良い友は厳しい日にわかる」という諺があるそうです。1991年旧ソ連からの独立直後、自国内の領土を巡る隣国アルメニアとの戦いに敗れ100万人以上の難民(自国内避難民と難民を併せて)が生じました。アゼルバイジャンにとって「最も厳しい日 」は、この時でした。そのような局面で、他の多くの国々が行った食糧支援に加えて日本は、病院や学校などのインフラ施設建設や井戸の採掘技術供与など、一回きりではなく、避難民が自立できるような未来につながる、持続的な支援を行いました。アゼルバイジャンの方々は、最も厳しかった時代に日本から助けてもらったことを忘れないと言います。

 

こうした背景を考えた時今回我々がアゼルバイジャン共和国大使館から無条件に支援を受けられていることはこれまでの二国間外交~政府間に限らず草の根レベルも含め~それに携わった人すべての功績の賜物であり、我々の活動が、多くの先人達の善意や努力の上に成り立っていることに気付かされます。

 

今回の演奏会を前に、カラーエフの音楽に純粋に感銘を受け

「カラーエフの音楽を演奏したい、日本で紹介したい」ということをアゼルバイジャン共和国大使館に申し入れたところ、即座に協力を申し出てくださいました。なんのコネクションも持たない、一企業の新設アマチュアオーケストラである我々の思いを受け止め、全力で支援してくださった大使館やバクー音楽院の方々に対して今我々ができることは、彼らにとって大切な音楽を、誠心誠意、また技術的にも出来うる限り準備し、精一杯良い演奏をお届けすることと考えています。これまで築かれてきた良好な二国間関係を大切に、さらに発展させるために微力ながら、今度は自分たちが力を尽くしたいと思っています。

【プログラムについて〜カラーエフとショスタコーヴィチの関係〜】

今回の演奏会ではロシアの音楽院で師弟関係にあった三人の天才作曲家の”バレエ音楽"を演奏します。グラズノフとショスタコーヴィチが師弟関係であったことはよく知られていますがショスタコーヴィチとカラーエフもまた師弟関係にありました。

 

時間的な流れを縦軸に地理的、文化的な洋の東西を横軸に

今回の演奏曲を捉えた時、カラーエフの音楽は、縦軸では三者の師弟関係を通じて西洋音楽が受け継がれていった先、音楽史では”新古典主義”の延長あたりに、横軸ではちょうど東西文化の融合するところに位置しており、興味深いです。

 

アゼルバイジャンの伝統音楽はギリシャ文明の影響も受けた、高度な技術を要する優れた芸術です。カラーエフは、その伝統音楽と西洋音楽、更には当時芽吹き始めていた12音技法なども積極的に取り入れて自身の才能を開花させていきました。

 

ここでショスタコーヴィチにも少し触れたいと思います。

ショスタコーヴィチはカラーエフの師であると同時に二人が真の友人同士であったことが、残されている往復書簡から読み取れます。また、アゼルバイジャンの伝統音楽に魅了されていたことを、自身が書き残しており彼の作品とアゼルバイジャン伝統音楽の中には多くの共通点がみられます。

今回は、カラーエフの作品の中に、ショスタコーヴィチとの繋がりを見つけることができるかもしれません。

 

一方、カラーエフを始めとするアゼルバイジャンの作曲家達は、ショスタコーヴィチを通して西洋音楽に触れることができたことに加えて自国の伝統音楽の魅力を再認識できたという側面があるかもしれません。その意味でも、今回取り上げるショスタコーヴィチはとても重要な存在に他なりません。

 

 

【バレエ音楽について】

今回”バレエ音楽"を演奏するにあたって、バレエの持つ根源的な魅力である「リズム」「物語性」という二つのことを表現したいと考えています。

 

踊りのない演奏会の場合、音楽だけで十分に楽しめるバレエ「組曲」を演奏することが多く今回も、グラズノフのライモンダとショスタコーヴィチについては、「組曲」から抜粋しました。

 

一方、メインのカラーエフ作品については、敢えてバレエ全曲版から抜粋しシーンを繋いだり、情景を描写する音楽も混えることで物語をより想像しやすいように工夫を凝らしました。組曲だけでは伝らないカラーエフの多彩な魅力を紹介しながらオリジナルのストーリーを元に仕立て直した「全5幕」の筋書きに沿って音楽は進行します。

 

バレエ音楽特有の「リズム」から踊りをイメージできるような、また音楽そのものが持つ「物語性」を引き出せるような演奏を目指します。

【参考文献】

・廣瀬陽子編著『アゼルバイジャンを知るための67章』明石書店、2018年

・谷口洋和、アリベイ・マムマドフ 著『アゼルバイジャンが今、面白い理由』KKロングセラーズ、2018年

・Aida Huseynova, “Music of Azerbaijan” Indiana University Press, 2016

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